「花の章」

いちどだけ
 二人で歩いた 桜(はな)小道  
    千鳥が淵に 春は廻(めぐ)れど

 この道を並んで歩き、二人で寄り添いながら、桜のアーケードをくぐりぬけた。でも、あのとき一度だけ。春は何度でも廻ってきているのに。

 

 九段下の近くに勤め先が有った関係で、靖国神社や向かいの千鳥が淵、北の丸公園にはよく出かけたものです。あまり近くにあるため、お花見にも当たり前のように出かけていたのですが、年々人が増えてきて、だんだん行かなくなってしまいました。

 

 ここには、千鳥が淵緑道と呼ばれる桜並木が有ります。お堀にそって、九段下から半蔵門界隈まで続くのですが、道幅は狭く、桜が堀に向かってちょうどアーケードを作るような形になっています。

 若かりし頃、デートというか、二人でこの道を歩くことが、何度か有りました。しかし、この道を二人で歩くのは、いつも一度だけ。なぜか二度目がないのです。春は何度でも廻ってくるのに。そう、二人でここを歩くと別れてしまう。いつのまにか、私にとって、そんなつらいジンクスができてしまいました。

 

 後の2枚は、緑道を反対側の北の丸公園側からみたものです。