半世紀を経てようやく実現

人生は迷路かな⑨ 半世紀を経てようやく実現 心理師万歳


 心理の国家資格に関する「公認心理師法」が国会で成立した。2017年度に施行されるという。

 いやはやいやはや、長かった。私がその不備を知りながらも心理学を学びたいと考えてから、半世紀!この国のピント外れでいい加減な政治には、ほとほと嫌気がさす。当時でもアメリカでは心理専門家が医者と対等に仕事をしていたのに、日本では全く格下の専門家とすら見られていない状態であった。それでも、多くの心理学コースの仲間は、専門的な知識が活かせる職場を求めて就職していった。

 私も心理を一生の仕事にしたかったのだが、職業家としてよりも学問として研究する事を望んでいた。だが、経済的な事情からとても無理ということで、一般企業に就職を決めた。そのとき、私に少なからぬ影響を与えた本がある。元々気の多い私は、コンピュータのSE(システムエンジニア)にも興味があった。そして、いずれコンピュータは、人間の心理に関する知識を必要とする時代が来るだろうと密かに思っていた。その考えが間違いで無いと教えてくれたのが、『「システム設計と心理学」Robert M.Gagn´e著、 翻訳:吉田 正昭、丸善1973年(昭和48年)』である。まさに我が意を得たりであった。

 よく人生に影響を与えた1冊などと言われることがある。自分が同じ考えをもっていたので、正直そこまでの感は無いのだが、忘れられない1冊である事は確かだろう。


 あれから40年以上が経過したいま、人工知能や感情を持つロボットなど、実にすばらしい進化を遂げてきた。それでも、どこか物足りなさを感じている。心理学からの劇的アプローチによるシステム設計の例をまだ見たことが無いからかもしれない。当時の医者と心理専門家との関係のように、心理専門家の下にSEがつく、そんなわがままを夢見たのかもしれない。何より人間の感情や感性に関するロボットやコンピュータなどの進歩が、ようやく始まったばかりだからかもしれない。

 ただ、どこかで劇的なブレークスルーが待っているような気さえするのだが。ロボットに依るカウンセラーが普通に行われる時代になるかもしれない。コンピュータや脳科学の技術と心理学とが融合して、その元であらゆるものが作られていくことが当たり前の時代。そんな事すら夢見ている。

 さまざまな思惑や権力闘争などが絡みあい、心理の国家資格が出来なかったのだろうが、人間を扱う心理専門家をどうやって試験で見極めるのか、それこそ非常に難しい問題であろう。
 「アナタは人の心を扱うのに ヒトノココロ 理解 してていません」などとロボット審査官にだめ出しされたりして。

平成27年(2015年)9月10日

2015年09月10日|コラム・エッセーのカテゴリー:人生は迷路かな