企業や役所で固定電話を廃止するところが出てきた。よくわからないのは、固定電話と携帯電話の違いは、回線がつながっているかどうかではなく、個人を宛先とするか、部門や業務全体を宛先とするか、の違いだと思うのだが。たとえば、カスタマーセンターとか広報部に電話したいとき、まさか特定の携帯電話番号を教えるわけではあるまい。結局着信払いの電話とか、グルーピングされた代表番号に掛けるのだろう。
何を言いたいのかというと、固定電話が古くさくて、携帯が進んでいるまたは当たり前であると言うような刷り込みで、大仰に宣伝する企業や役所に、むしろわかっていないなと言いたいのである。
携帯電話が普及し始めたとき、会社で携帯の番号090などを使うのはだめだと言われたことがある。企業は03の番号でなくてはならないというのである。電話番号など何でもいいし、なにより、いずれ番号なんて誰も直接使わなくなると反論した覚えがある。実際、その後電話番号は、実に色々な物が使われ、さらに電話番号など覚える人はいなくなり、今では一度使えば電話番号など無意味になっている。
つまり、技術の進歩は、それまでの常識やあたり前であったことも変えてしまう。問い合わせや顧客対応なども、スマホやパソコンのチャットにより行われるのが当たり前になると、生身の人間同士をつなぐ「電話」の機能そのものが不要になっていく。
と言うところで本題に話をつなげると、要するに固定電話の機能をよく考えたのかどうか、もう一度聞きたいのである。さらにいえば、今の固定電話を廃止しても良いが、それに変わる新しい設備をどう考えたのかと言うことだ。NTT東日本は、2024年から今のPSTN(電話交換機網)をすべてIP電話網に変更する。アナログからデジタルへの変換とも言える。これに伴い実に多くのサービスが廃止される。使われないサービスは廃止されるのが当然で、それは良いのだが、では新しいサービスは何があるのかと言えば、さして目新しい物はない。
最近、次世代6G光通信の世界標準を取るために、NTTとKDDIが共同開発を進めることになった。これはNTTのIOWN技術を基盤とする。同じようになぜ、遅れている日本全体の、とりわけ家庭の通信設備の充実を図ろうとしないのであろうか。今の固定電話網を含めて、新しいIOWNのネットワークを家庭や企業に広めるような事をなぜ考えないのであろうか?
テレワークとかいいながら、遅くて脆弱なネットワークをつかわせたままなど、根本の考え方が誤っている。光回線も、家の前までではなく、住宅内の各部屋の中にまでつなげるべきなのである。この基盤ネットは、いわば国営企業のような形で1社が全国に提供する。その光回線を民間が自由に利用できれば、民需の圧迫にならないどころか、重複の設備投資も防げる。
これをまずは、一国二経済で取り上げたA2住宅向けに敷設するから始めれば、新しい住宅地域なのだから何の問題も無いはずである。
このように単なる古い設備のいれかえではなく、新しい発想により、全く新しい物に変えて欲しい。それが真の破壊と創造だと思うのだが。デジタル庁などといいながら、こういう発想は聞こえてこない。
令和5年3月7日(火)