縦割り行政と縄張り意識が国防を妨害する

 自衛隊自身がドローン導入に否定的であったために、北東アジアで武装ドローンを保有しないのは、自衛隊とモンゴル軍だけという情け無い状態だった。自衛隊がなぜかくもお粗末な現状認識であったかについては、これまでも何度かふれてきたので、今回はそれを脇に置いておこう。

 ウクライナ戦争の現実を見てさすがの自衛隊制服組も、自民党の防衛族の政治家の言うことを受け入れて、 とにもかくにもドローンの導入を重要項目として決定した。
 しかし、いくら防衛省がドローンを導入しても、実際の運用までには、多くの他省庁や法律の壁が立ちはだかっている。それらをまとめて改善するのにどのくらいの期間がかかるのであろうか?

 多くの問題をまとめたとき、誰も触れたがらない、有事の自衛隊の超法規的行動の規範の問題がある。たとえば、迎撃ミサイルのブースターが落ちてくるかもしれないから、迎撃ミサイルの配備は認めないなどという馬鹿げた論理を易々と受け入れて、配備そのものをやめてしまった、とんでもない防衛大臣がいた。これも、有事と平時の違いを全く無視した考え方が、その根底にあるのだろう。

 自衛隊の車両もすべて道路交通法に従わなくてはならない。これも平時はよしとしよう。だが緊急出動しているのに、交通規則を守れ、戦車も赤信号で止まれなどという馬鹿げた話がどこの世界にあるのだろうか。
 ドローンでもこの種の話が数多くある。ドローンを飛ばすのに48時間前までに警察に通報が必要だという。ミサイルが飛んできたり、敵が攻撃してきているのに、ドローンを飛ばすには警察の事前許可が必要などあり得ないだろう。いや何たら事態という物があると言うが、それを政治家が決める前に、国会議事堂も首相官邸もなくなっているだろうに。災害派遣で実際に、この制約によってドローン使用をやめた例もあると言う。

 これら多くの妨害の背景にあるのが、各省庁の縄張り意識である。国家よりも自分たちの省庁優先の官僚達は、自分たちの縄張りで持つ利権や権限を他の省庁には決してまかせようとしないのである。たとえ非常時でも。さらに官僚の薄汚さは、いや例外規定は運用で出来ますといういいわけである。だが、この例外、実行されたためしがない。難癖付けて時間稼ぎをしたり、許可しないからである。

 逆もある。自衛隊基地に民間人がドローンを飛ばすことは可能なのである。事前に申請すれば、原則として拒否しないようになっている。なぜなら野党や左翼系政治家達が人権侵害とか差別と行ってさわぐからである。あり得ない法体系である。

 海保は有事には自衛隊の指揮下に入るのだが、これを海保の官僚達は否定的に発言している。また違法などの取り締まり権限は、自分たちだけのものだとして譲らない。実際、海上保安庁の人間が、海上自衛隊の護衛艦に乗船しているのである。

 自衛隊の活動に常に否定的な外務省も、同じ背景がある。海外との交渉に防衛省が出てきたことが気に入らないのである。長らく2+2の会談が行われなかったのもその為である。

 要するに、各官庁の縄張り意識とそれを後押しする族議員が、国全体の利益を妨害するのである。そのなかでさらに、平時も有事もごちゃ混ぜにして、自由な活動を認めようとしない。
 もちろん、戦前のように軍事力を持つ集団の行動を野放しにしろというのではない。むしろ、きちんと制御するために、ルールを決めておくべきなのである。しかしそれは、他の官庁の権限下に縛り付けることでは決してない。

令和5年1月22日(日)

2023年01月22日|分類:安保, 政治