新しい地域統合の給食システムについて、すでに述べてきました。詳細は「泥棒が縄を綯う」「黎明の日本」等を参照ください。
給食を調理する中核となるのが地域毎の給食センターです。このセンターは原則給食を作る専用施設ですが、それではもったいないので、給食以外でも活用します。つまり、空いている時間には、民間企業の食堂や弁当屋さんを兼務すると言うことです。これによって、設備の運営費が少しでも安くなるように、施設の有効利用で稼ぐ事が出来るわけです。ただし、あくまでも公的施設が主で、民間利用は従です。これまでの一般の民間業者への委託とは、根本的に異なります。といって何たら法人や何たら機構にすると、無駄ばかりのお役所仕事になり、あげくは天下り先になってしまいます。そうしないためにも、民間企業でありながら、自治体から常に何人かが派遣されている形態をとります。ま、中身の話はこの位にして、給食センターが柔軟性を持つ意味についてです。
急速システム全体が、柔軟性をもつことで、様々な事態に対応する事が可能になります。そのひとつが、原材料のバッファー機能です。農産物でも、海産物でも、自然に依存する食品は、必ずしも計画通りに生産できるわけではありません。そんなときに、役に立つわけです。たとえば、有る野菜が極端に不作で取れないときには、献立の一部を変えて他の野菜にすることで市場に少しでも回すようにします。逆に取れすぎて廃棄する葉物野菜などは、廃棄する代わりにガソリン代程度で分けてもらいます。それを使って小鉢を一品増やせば良いのです。
今問題の、中国による海産物の輸入禁止にたいしても、ホタテは普段高くて給食に出しづらいですが、こういうときこそ大量に仕入れてあげれば良いわけです。業者も値崩れしないで喜ぶ、生徒もおいしい物を食べられて喜ぶ、栄養管理士なども珍しい食材が使えて喜ぶ、となるはずです。こういうことも給食センターが調理を柔軟に出来る形になっていなければ、なかなか実現できません。
もう一つの例は、夏休み中に給食がないために、貧困家庭がこまったり、弁当を作らなくてはならない母親の負担増になったりする問題があります。これも給食センターは、給食以外に副業的に食堂や弁当屋をやっているのですから、夏休み用の給食をつくったり、給食弁当を作ってうることにより、これらの問題を解決するのに貢献できます。費用も原価割れしない範囲で、安価に提供出来れば、皆が助かります。あるいは、自治体が支援しても良いでしょう。
このように、システム全体に柔軟性をもたせることで、何か急な事態が起きた場合でも、対応する事が可能になるわけです。効率という名の元に、あまりにもガチガチで余裕のない今の産業構造が、コロナやウクライナ戦争などで、より大きな悪影響を受けることになったのです。もう一度原点にもどり、常に20-30%の余裕を持った事業経営で有るべきでしょう。
令和5年8月26日(土)