『アマゾンのアパレル店あえなく閉鎖 革新的でも消費者の心つかめず』(日経ビジネス)という記事がありました。読んでいて前から思っていたことが、より鮮明になった気がしました。それはそのうちスマホ万能の時代も終わるのではないかという事です。
通販の覇者とも言えるアマゾンが、敢えてリアルな実店舗に挑戦して、アパレルの店を何店舗か開きました。先進技術で新しい店舗の形に挑戦したのです。広い店で自由に実際の服を選べる販売方法でした。気に入った服の試着をスマホで入力すれば、試着室に自動的に用意されます。しかも同時に複数の服を指定できます。その為に試着室が数多く用意されていましたが、それでも待たなければならない時にも、スマホに連絡が来るのです。
このようにすべてスマホで済ませられるという店だったわけです。しかし、始めこそお客さんが押し寄せましたが、次第に客足は遠のき、ついに店舗を閉鎖することになったのです。狙いは、通販では実物を手にできないという弱点をカバーする事だったのですが。特に服ではサイズの問題もありました。そこで、実物を店舗で見てもらい、それをネットで注文する方式を考えたわけです。リアルとネットの融合だったわけです。
それが何故失敗だったのでしょうか。個人的には、この何でもスマホを使ってと言うのが、むしろ問題だったように思えます。わざわざリアル店舗に行ってまでスマホとやりとりをしなくてはならないというのは、どこか人間の感覚というか感性に会わない気がするのです。個人的には、何十年も前からパソコンをつかっていたので、スマホが出現したときにも飛びつきませんでした。いまも、外出時以外では、さしてスマホに魅力を感じません。あまりにも複雑かつ面倒になっています。もっと対話型の音声入力が普及していたら、もう少し変わっていたかもしれませんが、外で大勢の人間が音声入力を使用する為には、まだ技術的なハードルがあったのです。(今もあります。)
すべてスマホだけで済むというのですが、声を掛ければ済むものを一々自分からスマホを操作しなくてはならないのは、何度も続くと面倒に感じてきます。これは人間の心理でしょう。ChatGPTの普及で、人間らしい対話が当たり前になってきた現在では、一方的な操作に感じるものは、次第に少なくなっていくと思います。
IT技術者の間では、何年も前からスマホに代わる端末が検討されてきました。いくつかはすでに実用化されています。この方向性はもちろん今後も進んでいくと思いますが、アマゾンで感じた失敗は、端末の種類では解決されないと思えるのです。では、何ならいいのか?簡単に言えば、対話型ロボットです。それも人型で、歩行移動できるタイプです。アパレルなら、その人に会った服を店員さんが選んでくれます。それをロボットもやれば良いのです。要望の服がどこにあるか店舗内を案内する事もします。試着のスマホ入力もロボットがやってくれます。たった、これだけの対応で、来客の満足度は大きく変わると思います。
生身の人間による対応の最大の利点は、ユーザの要求を的確に理解してくれる事でしょう。生成AIが飛躍的に普及し始めた現在、これがやがてさらに進んでパーソナルAIになるでしょう。その過程で様々なAIサービスやロボットが生まれてきます。機械側が、今人間が求めていることを的確に把握し反応してくれる事でしょう。人間の感情さえも理解する鉄腕アトム型ロボットにはもう少し時間が必要かもしれません。でも、特定の分野でならば、案外可能なのではないでしょうか。それがアパレル店員ロボットなのなのです。
少し脱線しますが、本来純愛小説である「居候の夢」がSFだと申し上げたのも、この小説に出てくるサイバーロボットの『居候』は、まさにこの未来のAIロボットだったからです。人間の感情を理解し、自ら判断を下すことすらできるという、IT技術者の究極の夢を実現したものなのです。その一部がすでに実現し始めているわけです。しかし、まだまだ先はあります。だから、まだSFの一部なのです。そのような目で読んでいただけるとまた違った感想も生まれるかもしれません。書かれた飲み屋の店員ロボットを始め、10年ぐらいの家に実現していそうな技術、そして究極の個人ロボットが居候なのです。
昔から人型ロボット、人間と対話するロボットに力を入れてきた日本ですが、なかなかうまくいきません。AIソフトについての根本的な考え方が、少しずれていたのかもしれません。肉体であるハードと頭脳であるAI、両者をもっと積極的にまとめるべきだったのです。これからの日本の技術者の活躍に期待したいものです。
令和5年11月28日(火)