「居候の夢」に近づいた「GPT-4o」

 ChatGPTの新しいモデルが発表されました。これまでのテキスト中心の会話から、画像や音声まで含めた会話が可能です。会話の速度もあがり、人間らしい受け答えになっています。AIからの回答を遮れるなど、いかにも人間の会話に近づいています。この様に生成AIの進歩の早さには、ただ驚かされます。ですが、これは当然想定されていた進歩の形で有り、その意味では驚くべき物ではないのかもしれません。
 弊著居候の夢」では、サイバー空間に住む居候(AIロボ)が、主人公とコミュニケーションをとりながら、より人間らしくなっていく物語になっています。この小説で描いた事が、ものすごい勢いで現実の物になっているわけです。この小説は、本来JK向けの恋愛小説ですが、そこにSF的な要素を加えて、鉄腕アトムのようなサイバーロボットを登場させています。すでに一部実現しており、完全な空想物ではないのでSFではないとのご意見もありますが、2030年頃までには実現されていそうなSF的世界を描いたつもりです。

 人間の考えることは皆同じなのでしょう。半世紀も前にコンピュータを使い始めた頃から、今の生成AIのようなものを、多くの技術者が皆夢に描いていました。機械と人間が対話して物事を進めていく、機械が人間に代わって様々な仕事をしてくれる、そんな世界です。私自身、パーソナルアシスタントのソフトということで、何度か開発を試みようとしたこともあります。それが今回の新モデル「GPT‐4о」のニュースによると、「居候の夢」の中で描いた事と重なる部分がいくつもありました。


 居候の夢では、居候(AI)が漫画を学習することで、人間の感情や感性を学んでいます。GPT-4oでは漫画をその場で読解出来るというのですから、まさにその一歩ですね。漫画を読み込む事はすでにこれまでも行われていますが、それは漫画を生成する目的が主でした。これから、さらにその先に進むことでしょう。人間らしさを学ぶ教材として漫画は有効なものだと思います。

 人間の会話に近づいたのがGPT-4oですが、よりなめらかな会話や、テキストだけではなく画像や音声など複合的なメディアでの会話は、さらに進めば、居候のように皮肉を言えたり、知らん顔したりとより人間らしい応答をするようになる事でしょう。

 居候では、マザーAI(マスターロボ)に尋ねることで、異なる多くのAIロボを利用できるように描きました。GPT-4oも、他のAIを動かせるようになったのですから、これも同様の発想と言えるでしょう。

 OCRなどの読み込みがより高度になっていますが、これは居候が人間の顔色を読むことで出来る事につながります。

 居候が特定の主人に仕えているように、現実のAIも特定の目的に特化した物に進んでいます。個人レベルの専用AIになるのも近いことでしょう。

 小説ではさらに、居候が自ら判断を下せるようになり、最後には自分の生死すら決定します。軍事用AIでは、すでに自律型兵器が作られており、ある種の判断を任せていると言えます。ただし、これは倫理上の問題を孕んでは居ますが。

 このように小説の中で描いた事が、一歩づつ現実世界でも実現されてきているわけです。

 JK向け恋愛小説でも、読み方によって、新しい技術の方向性を考える材料になりえるわけです。そんな形で、もう一度読んででいただければ幸いです。

令和6年5月14日(火)

 

2024年05月14日|分類:オン草紙, 科学