こんな刺激的な題の記事があった。
『「若い女性は正社員として雇用してません」 女性社長が炎上覚悟の投稿 中小企業の切実事情』
女性社長は炎上覚悟だったのに、むしろよくわかる、理解出来るという声が多くて驚いたという。要するに寿退社や産休や育休の可能性がある若い女性は正社員に採用できないというのだ。理由は言うまでもない、従業員数が少ない中小企業においては、社員が一人欠けることの影響はとてつもなく大きくて、とても負担しきれないと言うことなのである。ちなみに彼女の会社は2社あるが、ともに社員10名足らず。
言いたいことはよくわかるので、批判めいたことは言いたくないのだが、集団農耕型気質の人にはこのタイプが意外に多い。彼女も社長になる前は、むしろ男女共同参画推進派だったが、社長になって考えが変わったという。
この話で昔勤めていた会社(大手大企業の子会社で、自身大企業に属する規模)での事を思い出した。ある男性社員がおり、とにかく異常なほどに上司批判をしていた。それが、理由は知らないが、批判していた上司と同じ身分になったのだ。そうしたら手のひら返しで、自分が散々批判していた上司と全く同じ事をやっているのである。きっと、その立場にならないとわからないことがあるのだ、とでも言い訳していたのだろうか。
この手の、「お前は経験ないくせに、知らないくせに、俺はわかっているのだ」との発言をまき散らす元首長、議員、その道の専門家、とかは意外に多い。これが現状の誤りを改革しないままでいる原因のひとつにもなっている。彼女がその一人とは言わないが、行き過ぎた経験至上主義は、時に怠惰のいいわけとなり、傲慢さとも紙一重になる。
他にもいくつか問題点が存在する。ひとつは正社員はだめだが、非正規なら良いとか、と言うことがある。この非正規差別とも言うべき風潮は大企業だけではなく、中小企業にまで広く浸透している。この差別構造こそが、デフレ社会を続けさせるひとつの大きな原因になっている。自分の回shさえ良ければと言う、公を忘れた多くの経営者の利己主義が、今の現状を招いたのだ。松下幸之助も、儲けられないすなわち社会に貢献できない会社は潰れるべきだと明確に発言している。コロナ後のゾンビ会社の倒産がささやかれているが、本来潰れるべき会社が生きながらえているために、ますますそのしわよせが働く人に行ってしまう。
政治家は、自分の票のために、官僚は自分達の権益維持の為に数が欲しいのである。したがって、生かさず殺さずの政策しかやらない。根本的に改革されてはこまるのである。だからバラマキを続ける。
酷なようだが、正しい経営の出来ない経営者は経営から手を引くべきなのである。
もちろん、この問題の本質は、中小企業の経営者達の利己主義だけにあるのではない。自社の正社員の待遇だけ良くし、そぼコストをすべて下請けなどに転嫁し続けてきた大企業の経営者も、同じ穴の狢である。しかしより問題なのは、現状のような中小企業を生み出したまま、そこには全く手を付けてこなかった社会の指導層の利己主義と無責任なのである。
中小企業がどうしたら、今の現状から抜け出せるのか、具体案の一部は日本改革私案や弊著でものべてきたので、ここでは繰り返さない。一言で言えば、中小企業を今の1/50にすることである。最低でも1/10にはすべきだろう。その具体案もすぐにでも実現可能な物がいくつかある。音次がいなくて自然淘汰されるまで放置したら、この国の中小企業すなわち産業は立ち直れないであろう。
何気なく発した、社長の発言に気持ちは理解出来ても、それでは社会は変わらないし、良くもならないという気持ちも理解して欲しいのだが。
令和5年2月9日(木)