サイバー空間の仮想独裁者:巨大既得権益と戦う個人勢力
あまり目立ちませんでしたが、こんなニュースがありました。『NY株 米メディア「個人がウォールストリートを打ち負かした」』(NHK)
どういうことかと言えば、株式市場ではいわゆるヘッジファンドなどと呼ばれる巨大な資金力を持った企業や投資家が、株式市場を実質的に動かしてきました。かれらは、空売りなど様々な方法を駆使して、株価が上がろうが下がろうが、自分たちだけが儲かるような行動をとってきたわけです。その結果、割を食うのは資金力が無い組織・企業や個人投資家でした。この現状に一矢報いるような出来事が起きたのです。
若者を中心に流行するロビンフッドと呼ばれる個人投資家用アプリがあります。これを使って、多くの個人投資家が特定の銘柄の株を大量に買ったのです。SNSなどを通じて、この行動への参加が呼びかけられたのです。その結果、株価の値下がりを見込んで空売りをしていたヘッジファンドが、損害を被ったようだということなのです。つまり、これまではヘッジファンドなどの巨大な力を持つ勢力が好き勝手をやれていたわけですが、それを力の無い個人でも集まれば、十分に対抗できる可能性が示されたわけです。
昨日のブログ「人類が生み出した新しい独裁者と見えざる鎖」で、情報文明が、メディア関係者やIT企業経営者などの新しい独裁者たちを生み出したと書きました。ヘッジファンドなどは、金融市場における独裁者でもあったわけです。コンピュータを駆使して高速取引を行うなど、情報技術の恩恵を十分に享受していたわけです。そんな彼らに、同じ情報技術である株アプリやSNSによる連帯で抵抗を試みる勢力がでてきたわけです。
情報文明がもたらした様々な技術は、その技術そのものに善悪はなく、使用する人間の問題であることが、この例からもよくわかります。いまネットにおける匿名性や思考誘導(洗脳)が問題になっていますが、くわえて、一時的な独裁者を生み出すことも出来ることがわかりました。しかも、それは特定の組織によるものではなく、ある目的だけで一時的に集まった集団に過ぎません。いわば、サイバー空間における一時的な仮想独裁者とでも呼べるものです。
ヘッジファンドに一泡吹かせるだけであれば、問題は無いでしょうが、ISなどのテロリストたちが、同じようなことを始めたらどうなるのでしょうか?IS(イスラミックステート)は、強固な組織と言うよりも個人の集まりという部分がありました。まさにサイバー空間での動きと同じです。
サイバー空間はもはや国家間の戦争の場として正式に認知されています。自衛隊でも少数ですが、対応部隊を創設しています。ですが、日本国民全体の危機意識の希薄さと、新しい技術への認識不足は、どうしようもないほど低レベルなものです。
日本改革私案では、情報省の創設を繰り返し述べてきました。ここに、もっとはっきりとサイバー空間の管理・取り締まり機能を持たせて対応すべき時が来たようです。自由や人権を侵害しない範囲での警察機能をどこかで準備しないと、他国や特定勢力の支配下に置かれてからでは遅いのです。そうでなくても、日本のサイバー空間のメディアは、すでに特定の勢力に侵食されているのは明らかなのですから。
令和3年1月31日(日)